ベトナムコーヒーの器具は、近年コーヒーショップでも見かけるようになりました。使い方が簡単で、エスプレッソのような濃厚なコーヒーを淹れることができるのが特徴の器具です。
とはいえ、ただコーヒー粉にお湯を注ぐだけとはいかないベトナムコーヒー。実は色々な手順があるコーヒーなのです。
使う道具を確認しよう
- ベトナム式ドリッパー
- カップ
- コーヒー粉(深煎り・中挽き程度)
- お湯
- コンデンスミルク
コーヒー粉は「深煎り」
ベトナムコーヒーで使うコーヒー粉は原則「深煎り」です。これはベトナムコーヒーの歴史を辿れば解ります。
ベトナムは現在に至ってもそうですが、ロブスタ種のコーヒー栽培が盛んな国です。ロブスタ種は苦みが強く、独特の風味を持っています。それを美味しく飲むために、深煎りのコーヒー豆で濃く抽出し、練乳を混ぜて飲むようになったのです。
そういった背景から、ベトナムコーヒーはアラビカ種の場合でも深煎り豆が適しているのです。
極細挽きは避けよう
ベトナムコーヒーはその濃厚な特性上、極細挽きで淹れると思われがちです。しかし、細かすぎては苦味が強くなってしまうだけでなく、粉がフィルターを通り抜けてしまい、飲む際にざらざらとした口当たりとなってしまいます。
通常のベトナムコーヒーでは「中挽きが一般的」と考えて頂くのが無難です。もちろん好みに応じて細めに挽くのも良いですが、あまりにも細かすぎないように気を付けてください。
ベトナム式ドリッパーの構造
ベトナム式のドリッパーは、3層のステンレスフィルターと言われることがありますが、必ずしもそうとは言えません。また、ドリッパーは大きく分けて2つのタイプがあるので、各々について見ていきましょう。
① 抑えるタイプのドリッパー
まず最も一般的なドリッパーが、コーヒー粉を中蓋で押さえつけるタイプのドリッパーです。
部品は写真のように、上蓋・中蓋・ドリッパー・下皿の4つの構造になっています。そして、コーヒー粉のフィルターは、抑え蓋・ドリッパー・受け皿の三重のフィルター構造になっています。
アルミ製の簡単な造りのドリッパーに多く見られるタイプで、最も一般的なベトナム式ドリッパーのタイプです。
② ねじ込みタイプのドリッパー
そして、もう一つのタイプがねじ込みタイプです。こちらは蓋を捻じ込んで固定するので、コーヒー粉をしっかりと固定できるのが特徴です。
部品は上蓋・中蓋・ドリッパーの3つの部品からなる物が多くみられます。
このタイプの特徴は、画像のようにネジで蓋を固定するところにあります。固定されたコーヒー粉は、ドリッパーから漏れづらくなるため、受け皿とドリッパーのフィルターが一つに省略されている場合が多く見られます。
またネジのある精巧な造りなので、ステンレス製に多く見られるタイプです。
ベトナムコーヒーの淹れ方
① ドリッパーと粉の準備
まず、ドリッパーの下皿とドリッパーを組み立てます。
そして、ドリッパーにコーヒー粉を入れます。
ベトナムコーヒーのコーヒー粉は細かいので、フィルターを抜けて皿の下まで漏れ落ちることがあります。そのため、上蓋を皿の下に置いて漏れた粉の受け皿にしてあげると、後片付けが楽になります。
② 中蓋で抑える
コーヒー粉を入れたら、次は中蓋で粉を抑えるのですが、これは蓋のタイプによって変わります。
- ねじ込むタイプの蓋:そのままねじ込んでコーヒー粉を固定してください。
- 抑えるタイプの蓋:蓋をコーヒー粉の上にのせて押さえつけてください。
この蓋はコーヒー粉を抑えて固定するためにあります。軽く乗せただけでは抑えの意味を果たさなくなるので注意してください。
また、ねじ込むタイプも同様ですが、この蓋をきつく締めると抽出時間が長くなり、濃いコーヒーを抽出することができます。自分好みのコーヒーに合わせて、締め具合を調整してみてください。
③ 練乳を先に注ぐ
ベトナムコーヒーは苦すぎるので、ブラックではあまり飲まれません。多くはカフェ・スア(cà phê sữa)といって、練乳を入れたスタイルが一般的です。このカフェ・スアで飲まれる場合は、コーヒーを淹れる前に練乳を入れてください。
④ お湯を注いで待つ
そしてすべての準備が完了したら、これから抽出です。
まず、ドリッパーをカップの上に乗せます。
次にお湯を注ぎます。この時、抑えるタイプの蓋のドリッパーを使う方には、ぜひ気を付けて頂きたいことがあります。
それは、注ぐときにケトルを回しながら全体に注ぐことです。もし一点に集中してお湯を注ぐと、対流が起きて、抑え蓋が浮いてしまい、コーヒー粉がバラバラに瓦解しやすくなります。それを防ぐためにも、全体にバランスよく注いでください。
そして上蓋をかぶせて待ちます。
実はこの待ち時間がベトナムコーヒー最大の特徴です。5~10分かけて抽出するのですが、最初の1分ほどはコーヒーの滴が落ちないこともしばしば。初めて淹れるときは、全く抽出される気配がせず不安になりがちですが、そこは気を長くして待ちましょう。
そして、1分後あたりからポトポトとコーヒーが落ち始めます。
そして次第にコーヒーが溜まっていきます。
⑤ ドリッパーを外す
滴が落ちなくなったら抽出完了ですが、最後に一つポイントです。
ドリッパーをカップから外したら、上蓋を受け皿にして、ドリッパーを置いてください。こうすることでコーヒーの液漏れがせず、後片付けが楽になります。
こんな時はどうしよう?
落ちる速度が速いor遅い①:コーヒー粉の粒度をCHECK
初めにお話ししましたが、ベトナムコーヒーは中挽きが適しています。
このコーヒー粉が細かすぎると、コーヒーの抽出に時間がかかってしまいます。またその一方で、粗すぎると早く落ちきってしまいます。まず抽出時間がおかしいなと思ったら、コーヒー粉の粒度を確かめてみてください。
落ちる速度が速いor遅い②:抑えが弱い?
コーヒーの抽出時間を決めるもう一つの要素が、コーヒー粉の抑え具合です。お話しした通り、締まりがキツいと遅く、緩いと早くコーヒーが落ちます。コーヒー粉はちゃんとしているのに……という時は、この締め具合に注意してみてください。
コーヒーに粉が混ざっている:極細挽きと抑えの弱さ
失敗してしまうと、コーヒーに粉が混入してしまうことがあります。これは大きく2つの要因が考えられます。
1つ目はコーヒー粉が細かすぎること。細かすぎると、フィルターを通り抜けてコーヒーとともに粉が落ちてしまいます。
そして2つ目は、抑えが弱いことです。コーヒー粉を抑える蓋が弱いと、お湯を注いだ時に蓋が浮いてしまうことがあります。こうなると抑えが効かなくなってしまうため、コーヒー粉がバラバラになって、粉がカップに落ちてしまうのです。
コーヒー粉があまりにも多いなと感じた時はこの2点に気を付けてみてください。
濃厚で甘いベトナムコーヒーを楽しもう
ベトナム式ドリッパーは、その使い勝手の良さから、普段のペーパードリップのコーヒーには飽きた人にお勧めです。また、エスプレッソのような濃厚なコーヒーを飲みたいという方にも良いでしょう。
ベトナムコーヒーとコンデンスミルクの緻密な味わいは、虜になってしまう方もいるくらいです。気軽に手に入れるようになったベトナムコーヒーの抽出器具、ぜひ一度使ってみてはいかがでしょうか。