京都・元祖喫茶店の「本当に美味しい」喫茶店おやつ
私の知人が出版している雑誌に、「珈琲時間」というコーヒーの専門誌がある。コーヒー店だけでなく、豆や道具のこと、海外でのコーヒー文化について等、コーヒーにまつわる様々な事柄を紹介してくれるライフスタイル誌だ。
以前、「喫茶店の極上スイーツ」という特集があり、二段重ねのホットケーキの写真に魅せられ、私は京都へ向かった。昭和7年(1932年)創業のスマート珈琲店は、商店街の中にあった。
店頭には、大きなミルが飾られている。
ガラスに貼られたゴールドの店名装飾が、昔ながらの喫茶店らしくて良い。
ショーウィンドウの中のメニューには、ホットオレンジやミルクセーキなど、他店ではなかなかお目にかかれないラインナップが。
深い茶色で統一された店内。照明や椅子など、家具もノスタルジックな雰囲気を一層高めてくれる。鉄製のシンプルなテーブルの脚が、どっしりとした幅広の椅子と合っていて、バランスが良い。
階段に並べられた赤色の缶が、空間のアクセントになっている。ロゴマークも素敵。
壁際には、絵画や古いマッチが飾られている。男女が向き合って、コーヒーを飲む時間を楽しむこのロゴデザインは、昔から変わらないこの店の様子そのものなのかもしれない。
最初に運ばれて来たのは、ホットオレンジとプリン。絞りかすがそのまま入った濃厚なオレンジジュースは、程良い温度に温められていて冬にぴったり。そして特筆したいのはこのプリン。本当に美味しい。
さらっとした苦めのシロップは、素朴且つ上品な味わい。柔らかすぎず硬くもない、程良い滑らかさで、家庭の味が元になっている様な手作りの味がする。底の部分のこんがり焦げた表面も美味。私は、人生で一番美味しいプリンに出会ったのかもしれない。
近年、カップのまま出されることも多いが、このヴィジュアルこそ本来のプリンだと思わせられる、見た目にも美しい一品である。
さて、コーヒーだ。店内に溢れるロゴマークがカップにも描かれている。
これぞ、元祖喫茶店!と思わせる、がつんとくる酸味。かなりきつめの、しっかりした味わい。少し冷めてくると、運ばれてすぐの頃よりまろやかに感じた。
ライトな飲み口を好む人からは、アメリカンが人気の様。
プリンが美味過ぎて満足しかけていたところに、お待ちかねのホットケーキが登場。本当にこの店は見た目が完璧なものばかりだ。
丸い二段のホットケーキの上に、行儀良く乗っている四角いバター。学生の頃、デザインの授業で「丸と四角は相性が悪いよ」と教わったのは嘘だと思った。
ふんわりではなくしっかりした生地。大きさはやや小ぶりだが、2枚で丁度良いボリュームだ。プリン同様、こちらもさらさら系のシロップ。甘さは控えめだが、プリンのシロップと違って苦みはなく、すっきりとしている。
本当に美味しいものは、「優しい食べ物」なのだと私は思う。量産や日持ちする事ではなく、手間暇かけた愛情ある味に、私たちはほっとする本物の美味しさを感じる。
日々の中の、当たり前のコーヒータイムが特別なものに感じたら、それはきっと本物の幸せだ。
スマート珈琲店 店舗情報
住所: 京都府京都市中京区寺町通三条上る天性寺前町537
移動時間: 地下鉄東西線京都市役所前駅から徒歩1分
営業時間: 8:00~19:00
定休日: 年中無休(ランチは火曜休み)
wifi: なし
電源: なし
喫煙: 全面喫煙可