コーヒーの歴史を追っていく当コラム。今回は、コーヒー豆の品質が悪かった時代の飲み方について紹介していきます。
現在のように新鮮なコーヒー豆が使われるようになるまで、人々は知恵を出し様々なコーヒーの飲み方を考案してきました。品質の問題だけではなく、コーヒーが禁止されたことによって生まれた飲み方もあるようです。
劣化したコーヒー豆の大衆化
コーヒーが大衆化しはじめた当初は、豆の輸送がしっかりと行われていませんでした。これは、当時の梱包技術・輸送手段等様々な要素が絡みあって発生した出来事でした。
特に、国土の広いアメリカでは鉄道や蒸気船の技術が発達するまで一般大衆が口にするコーヒーに用いられる豆は実に酷いものだったそうです。
コーヒー豆に用いられた着色料
その中でもオハマ、シンシナティといった場所で荷揚げされたコーヒー豆の品質は最悪だったそうです。そのため、劣化した豆で淹れるコーヒーには着色料が用いられていました。
インディゴやサビといったものから牛の血まで、現在では考えられないものが使われていたのです。
焙煎時の工夫
劣化したコーヒー豆を美味しく飲むため、焙煎の方法にも工夫がなされました。タマネギなどの野菜やシナモン、ココア、チョウジといった物と一緒に焙煎され、足りない分の風味をなんとか補おうとしていたのです。
砂糖やミルク以外にも…?
19世紀に入ると、現在でも主流となっている砂糖やミルクを入れて飲む方法が一般的となりました。南米から多くのコーヒーが世界に向けて輸出されるようになると、コーヒーの価格は下がり一般的な品質の豆が大衆でも楽しめるようになったそうです。
ウナギの皮や卵を混ぜていた
砂糖やミルクを入れて飲む方法が一般的となってきた当時、コーヒーを直接煮出して上澄みを飲む“トルコ・コーヒー”のような形であったため、豆の粉が浮いている状態で楽しんでいました。
これを避けるため、ウナギの皮や卵を混ぜた飲み方もあったそうです。ここまでくるともはやコーヒーの味わいは感じられなかったかもしれませんね。
コーヒー禁止令下、ドイツでは…
ドイツにコーヒーが伝わった当初は、上流階級にむけた高級品として嗜好品のような楽しみ方をされていました。18世紀に入りコーヒーハウスができるようになると、民衆の間で愛されるようになり、国民的飲料品であるビールの代わりに一般家庭に普及したのです。
しかし、輸入品のコーヒーが国内経済を脅かすことを恐れた当時のプロイセン王は一般民衆に対してコーヒー禁止令を下しました。それに加え、国内でのコーヒー製造を王立の企業に独占させたことによって、値段が上がってしまったのです。
コーヒー風味の飲料“代用コーヒー”
コーヒーを気軽に楽しめなくなった民衆は、本物の代わりに代用コーヒーとして、大麦やチコリをつかって“コーヒー風味の飲料品”を楽しみました。また、禁止令が解けたあとも高級品であるコーヒーは手が出しにくかったため、少しのコーヒーをお湯で薄めて飲むのが一般的な飲み方になったそうです。
多様に試してでもコーヒーを飲みたかった時代
このように質の良いコーヒーが手に入らなかった当時、人々は様々な飲み方を考え少しでも美味しくコーヒーを楽しめるよう努力しました。
現在では考えられないような飲み方ですが、ここまでするほど人々はコーヒーを愛してやまなかったのでしょう。