コーヒーの歴史を巡る当コラム。今回は世界有数のコーヒー消費量を誇るスウェーデンの歴史について見ていきましょう。
現在も世界でトップのコーヒー消費量を誇るスウェーデン。コーヒーが普及した当時のエピソード、現在のコーヒー事情とともに見ていきましょう。
スカンディナヴィア半島でのコーヒー普及
ヨーロッパの北部に位置する巨大な半島「スカンディナヴィア半島」。この土地にコーヒーが普及し始めたのは、他のヨーロッパよりも少し遅い18世紀頃だと言われています。
スウェーデンでは、1746年にコーヒーや茶類の過剰摂取に対する批判声明が出されました。このことから考えても、普及しはじめた当初から国民はコーヒーに夢中だったのでしょう。
一方で、スウェーデンでも1829年頃まで「コーヒー禁止令」が数回に渡って発令されました。
コーヒーを用いた実験
時のスウェーデン王、グスタフ3世はコーヒーの安全性を確かめるため、囚人を使って人体実験を行いました。双子の囚人に対して、片方にはコーヒーを20杯、もう一方には紅茶を20杯飲ませ続けて、身体に害が出るかを実験したのです。
その結果、紅茶を飲み続けた囚人が先に亡くなったとのこと。現代の私達からみると実に奇妙な実験ですが、これによって「コーヒーに害はない」ということが証明されたそうです。このことがきっかけとなり、政府が飲用を認め、コーヒーは国民的な飲み物となったのです。
気候とコーヒーの関係性
スウェーデンは現在でもコーヒー消費量で世界1、2を争う国ですが、これには気候も関係しているようです。コーヒーは身体を温めるために用いられることが多く、年間を通して気温の低い気候の国では、軒並み消費が多くなっています。
スウェーデンには四季があるものの、夏場でさえ日中の平均気温が10℃前後と非常に低く、冬になるとマイナスの日も多くなる気候の国。暖を取るシステムがしっかりと構築されていなかった時代は、コーヒーが欠かせなかったのかもしれませんね。
“フィーカ”という伝統的な風習
そんなスウェーデンには、コーヒーにまつわる“フィーカ”という伝統的な風習が存在します。
フィーカとは「コーヒーを飲む」という意味を持つ単語です。しかし、ただ単にコーヒーを飲むというだけではなく、友人や恋人と軽食を食べ会話を楽しみながらコーヒーを楽しむ、といった意味を含んでいるそうです。
単語として成立するほどスウェーデンの方々はこのフィーカという文化を愛しており、コミュニケーションを取る手段としてもコーヒーは大切にされているのです。
スウェーデンにコーヒー文化は欠かせないものだった
いかがでしたか?スウェーデンでのコーヒー禁止令と、王の意思によって行われた人体実験。この実験が正しかったかどうかは別として、スウェーデンはこの当時の風潮としては珍しく、コーヒーの無害をしっかりと証明しようとしたのです。
現在でもコーヒーが多く飲まれるのには、当時の王が「コーヒーを安全だ」と認めたことが発端になっているのかもしれませんね。