ガラパゴス諸島といえば、イグアナ・ゾウガメ・ダーウィンの『進化論』など、自然豊かなジオパークという印象ばかりの方が多いでしょう。コーヒーなんて全く想像できない……と思いきや、何とコーヒーが栽培されているのです。
そのうちの一つが、今回の「サン・クリストバル」です。そしてこのコーヒーには、ガラパゴスならではの事情が秘められているのです。
「サン・クリストバル」は、こんなコーヒー。
- 今回の焙煎:ハイロースト
香り
- フレグランス(豆の香り)
ローストナッツのような、香ばしく甘く滑らかな香り。 - アロマ(コーヒーの香り)
甘いナッツのようで、少しだけシナモン感のある爽やかな香り。
風味
- 穏やかだが豊かな風味
- 酸味と甘みが強めで、苦みは弱め
こんな時にオススメ
- 休憩する時に
- 昼に飲みたいコーヒー
- 春夏にお勧めのコーヒー
ガラパゴスとコーヒー
ガラパゴスはどこ?
さて「ガラケー(ガラパゴス携帯)」など、耳にする機会がおおいガラパゴス諸島ですが、どこにあるかご存知でしょうか?
ガラパゴス諸島はエクアドルの領土で、エクアドルの西方およそ900km、太平洋上にある孤立した島々です。孤立しているからこそ、ガラパゴスゾウガメやウミイグアナのようなユニークな動物が生息しており、世界自然遺産に登録される特異な環境を形成しているのです。
ガラパゴスならではのコーヒー事情
さて、世界自然遺産に登録されているガラパゴス諸島では、自然遺産ならではのコーヒーの栽培事情が存在します。それは、化学肥料・農薬を一切使用していないということです。
世界自然遺産に登録されているわけですから、むやみに自然を破壊するような行為は避けなければなりません。そのため、化学肥料の使用は厳格に禁止されているのです。ガラパゴス諸島産のコーヒー豆は「オーガニック・コーヒー」として扱われており、OCIA(Organic Crop Improvement Association)からオーガニック認証を受けているのです。
ペーパードリップ:さらりと滑らか
サン・クリストバルをペーパードリップで淹れると、爽やかな酸味と滑らかな甘みの混ざった様子が特徴的な一杯になります。
酸味そのものはサッパリしていますが、カルダモンのような複雑なフレーバーを持った爽やかさが、かなり印象的に響いてきます。そこに甘みがふんわりと漂っていて、スッキリしたイエメン産モカといった具合です。
そして余韻では、さらりと流れるように甘みが感じられます。サン・クリストバルの爽やかさと滑らかさの混ざった感触を、もっとも堪能できる瞬間です。
ペーパードリップで淹れたサン・クリストバルは、他の方法より酸味が際立って感じられます。さっぱりしたコーヒーが恋しい夏場などには、ペーパードリップで淹れてみるのも良いかもしれません。
雑味が最大の敵
サン・クリストバルのような、甘味の穏やかさや爽やかな酸味を持つコーヒーにとって、雑味は最大の敵です。
その理由は、万が一でも雑味が混ざると、穏やかさ・爽やかさとは正反対の、飲みづらいコーヒーになってしまうからです。また、同じ理由で沸騰直後の100℃近い熱湯も、やはり正反対のストロングなコーヒーに仕上がるので、気を付けたいところです。
特にペーパードリップは、クリアで輪郭のあるコーヒーに仕上がるので、雑味も目立ちやすくなります。80℃前後の温度で蒸らしや注ぎ方に注意しながら淹れることが、美味しさの秘訣です。
今回の抽出方法(HARIO V60ドリッパー)
- 豆の分量:一杯当たり12g(一杯120mlで計算)
- 挽き具合:中挽き
- 抽出温度:80~85℃
ネルドリップ:ゆったり軽い
サン・クリストバルをネルドリップで淹れると、ペーパードリップに比べ甘さとコクが強めに出ています。とはいえ、酸味とのバランスに優れており、中庸的な味わいのコーヒーを楽しめます。また、爽やかな酸味が立っていないので、滑らかさも強めに出ていて、ゆったり寛げるコーヒーに仕上がっています。
特に余韻ではその違いが明確で、ペーパードリップのサラリとした感触とは異なり、ゆるゆると舌に纏わりつく甘みを持っています。そのため、余韻の長さはネルの方がかなり長く続きます。一方で、爽やかさも程よく有しているので、しつこい余韻ではなく、軽く飲めるコーヒーでもあります。
今回の抽出方法
- 豆の分量:一杯当たり12g(一杯120mlで計算)
- 挽き具合:中挽き
- 抽出温度:80~85℃
フレンチプレス:強く穏やか
サン・クリストバルをフレンチプレスで淹れると、緩く爽やかで、しかし風味が良く出ているコーヒーとなります。
このコーヒーのポイントは、風味がしっかりしつつも全体としては穏やかなところです。個々の風味で見ると、酸味が若干強めで爽やかさがあり、甘みもしっかりとしています。そのため風味が強く感じられますが、爽やかさや滑らかな甘みのため、決してストロングではありません。
また、酸味と甘みの境界が曖昧なところも特徴で、余韻でよく感じられます。この曖昧さゆえに、風味が強めなのに飲みやすいというところが、このフレンチプレスならではの楽しみでしょう。
今回の抽出方法
- 豆の分量:18g(容量350mlのプレスを使用)
- 挽き具合:粗挽き
- 抽出時間:沸騰したお湯で4分00秒
水出しコーヒー:香る爽やかさ
水出しで淹れるサン・クリストバルは、爽やかで香り高さのあるコーヒーに仕上がります。このコーヒーを飲んでいると、ホットじゃないのに何か立ち昇っている感覚がします。
酸味はかなり落ち着いていますが、爽やかさはむしろ際立っています。そして、甘さはサラッとしており、しつこさがなく飲みやすくなっています。全体的にかなりスッキリしたテイストで、余韻も甘みがほのかに感じられる以外、すぐに消えてしまいます。
ペーパードリップ以上にスッキリとした爽やかさを持っているので、飲みやすいコーヒーが欲しいという方にお勧めです。ただ、見方を変えれば、風味は他の淹れ方ほど強く出ないので、そこは注意したいところです。
今回の抽出方法
- 豆の分量:150mlあたり10g
- 挽き具合:中細挽き
- 抽出時間:6時間
ミルク・砂糖との相性
- ミルク:良い
- 砂糖 :良い
カフェオレ:軽快or曖昧
ペーパードリップで淹れたコーヒーをカフェオレにすると、爽やかさによってコーヒーの風味は軽快なので、ミルクの風味がよく感じられるカフェオレになります。加えて、サン・クリストバルの持つ甘みが、ミルクの甘さを上手く引き立ててくれます。
ミルクを主役に添えたいカフェオレを作りたい方には、ペーパードリップをお勧めしたいところです。
他方でフレンチプレスでは、コーヒーの風味が曖昧なため、カフェオレ自体も曖昧さを持っています。しかし、風味もよく出ているので、カフェオレとしての味がしっかりしています。
緩いけどテイストのあるコーヒー
エガラパゴス諸島産という珍しさだけでなく、このサン・クリストバルはそのコーヒーの風味にも注目してほしい一品です。滑らかで飲みやすいのに、味がしっかりしていて飲み応えのある風味は、ぜひ堪能して頂きたいです。
淹れ方はどれも美味しいのですが、サン・クリストバルならではという点では、爽やかで穏やかなペーパードリップや水出しコーヒーがお勧めです。
コーヒー豆の情報
- 名称:サン・クリストバル
- 産地:サン・クリストバル島、ガラパゴス県、エクアドル。
- 品種:ブルボン種
- 精製:ウォッシュト
- 今回の焙煎:ハイロースト