コーヒーは好きだけれども、カフェインに敏感でコーヒーを飲むと寝つきが悪くなる人、妊娠・授乳中でカフェインの摂取を控えている人などに重宝されるのが、カフェインレスコーヒーです。デカフェ(Decaf, Decaffeinated coffee)とも呼ばれています。
デカフェやカフェインレスとは
「デカフェ」とはカフェインレスの飲み物全般(紅茶やコーラなども含む)のことを指しますが、一般的にはコーヒー豆からカフェインを抽出して除去したカフェインレスコーヒーのことを表す言葉です。
欧米ではカフェインレスコーヒーは一般的で、規格も定められています。焙煎したコーヒー豆中のカフェイン含有量が、0.1%以下(インスタントコーヒーでは0.3%以下)でなければ、カフェインレスコーヒー(デカフェ)と名付けることができないのです。現在の日本ではカフェイン含有量の明確な基準はありません。
ここで気になるのは、どのようにしてカフェインだけを除去するのか、という点です。次より、コーヒー豆からカフェインを除去する方法をご紹介します。
コーヒー豆からカフェインを除去する方法
生産された豆からカフェインを取り除く方法(脱カフェイン法)
薬品(有機溶媒)を使う方法:溶剤抽出法
カフェインが溶ける薬品を使ってカフェインを取り除く方法です。
以前はベンゼンや、クロロホルム、トリクロロエチレンなどが用いられていましたが、コーヒー豆に残留する可能性が懸念され、現在はより沸点の低い、ジクロロメタンが主に用いられています。
コストがかからず安価にできますが、カフェイン以外の成分の損失が大きく風味が落ちてしまうことや、薬品が直接生豆に触れるので、消費者にとっては安全面に不安が残ります。
※ジクロロメタンは動物での発がん性疑いの報告がありますが、日本では法律によりこの薬品を使用してカフェインを除去することは禁止されており、流通することはありません。
水と薬品(有機溶媒)を使う方法:水抽出法
まず水に溶ける成分を生豆から抽出し、成分が溶けている水に薬品を入れてカフェインを除去します。さらに、カフェイン除去後の薬品成分の残っている水から薬品成分を除去して、その水に残った成分を生豆に戻します。
この方法は、薬品が直接生豆に触れないのでより安全で、2段階抽出によりカフェイン以外の成分の損失を低く抑えることができます。さらに、薬品を回収して再び使うことができるので経済的です。
同じ水を使った抽出法でも、化学薬品を使わずに、カフェインを除く可溶性コーヒー成分で過飽和された水と活性炭を使う安全性の高い「スイス式水抽出法」もあります。ナチュラル製法のためカフェイン除去率は97%ほどですが、品質や味わいの損失は抑えられています。
二酸化炭素を使う方法:超臨界二酸化炭素抽出法
二酸化炭素に一定以上の圧力と温度を加え、液体と気体の両方の性質をもつ超臨界流体状態にします。この超臨界流体になった二酸化炭素を用いてカフェインを除去します。
カフェイン以外の成分の損失を抑えられるだけではなく、常温に近い温度でカフェインのみを抽出できるため、コーヒー豆本来の香りや風味を守ることもできます。何より、二酸化炭素を利用するので、他の方法に比べると安全性が高いと言えます。
ただし、コストがかかるので、コーヒー豆そのものの価格は高くなります。
カフェインが存在しないコーヒーの木を作る方法
脱カフェイン法では風味が損なわれやすいことから、これに替わる方法として研究が続けられています。遺伝子組み換えや人工交配により育種された成功例もありますが、まだ課題も多く実用化には至っていません。
カフェイン除去法まとめ
安全でおいしいカフェインレスコーヒーを作り出すために様々な方法が生み出され、現在も研究開発が行われています。いかに、コーヒーの味わいや特有の香りを好む人が多いのかがわかりますね。