マンデリンやトラジャで有名なインドネシアですが、今回の「ワハナ・ロングベリー」は少し異なります。その名の通り、普通のコーヒー豆より長い形をしています。そこが不思議な箇所ですが、実はそれ以上に不思議なテイストを持っているのです。
「ワハナ・ロングベリー」は、こんなコーヒー。
- 今回の焙煎:フルシティロースト
香り
- フレグランス(豆の香り)
バターらしさに少しスパイシーさがある香り - アロマ(コーヒーの香り)
フローラル感とミルキーさの、滑らかで円やかな香り
風味・特徴
- マンデリンとは全くベクトルが異なるテイスト
- 舌触りが非常に滑らか
- 甘みと柔らかいコク、ほんのり感じるモカフレーバー
こんな時にオススメ
- ゆったり落ち着きたい時
- チョコレートやジェラートと一緒に
- 癒しの時間に
マンデリンではない?ワハナ・ロングベリー
ワハナ・ロングベリーは、北スマトラ州にあるワハナ農園(Wahana Estate)で作られています。この農園はスマトラ随一の有名な農園で、マンデリンやコピ・ルアックなど、インドネシアを代表するコーヒー豆を生産しています。
そして今回のロングベリー、これもワハナ農園の代表格ですが、実はマンデリンとは少々異なるコーヒーなのです。
マンデリンとは異なるコーヒー豆とは?
まず名前の通り、コーヒー豆が非常に長い形状をしています。小粒が多いイエメン・モカと比べると、2倍近くの差があります。
専門的な話になりますが、ワハナ・ロングベリーも、一般的なマンデリンも、同じティピカという品種の系統と言われています。しかしロングベリーは、エチオピアのハラーという地区の物に似ており、幾多もの交配を経たマンデリンと似て非なる物なのです。
また精製(果実からコーヒー豆を取り出す工程)においても大きな差があります。一般的なマンデリンは、スマトラ式という伝統的なマンデリンの方法を採用しています。しかしロングベリーは、ウォッシュト(水洗式)と呼ばれる、マンデリンとは異なる製法が用いられているのです。
このような違いから、何と、ロングベリーはマンデリンとは全く異なるテイストを持っているのです。
どうやって飲む?
このワハナ・ロングベリーは、マンデリンとは異なる風味である点に注意が必要です。
深みが特徴のマンデリンは、ストロングに淹れるのを好まれる方もいるでしょう。しかしワハナ・ロングベリーは、この後お話しする通り、甘みや滑らかさが特徴です。そのため、ストロングでは個性を損ねかねません。
最終的には好みによりけりですが、一度マイルドに淹れてみると、ロングベリーの良さを堪能できるかと思います。
ペーパードリップ:バターのような質感
このコーヒーの特徴を一言で表すと「バター」です。滑らかな舌触りに、甘さ・深さ・そして豊潤さと、バターやジャージー牛乳のような、蕩けるコーヒーを堪能できます。
口に含むと風味が立ち昇る一方で、液体そのものに刺々しさはなく滑らかに流れていきます。その滑らかさの中から強い甘みが拡がり、一気にバターらしさが口の中を覆いつくします。そして余韻では、この甘さが緩々と長く舌に残ります。
ただこのコーヒーの凄い点が、ただ甘さだけのコーヒーではないという所です。芳醇さの中には、ほのかにスパイシーでフルーティーな感触が感じられます。特にペーパードリップでは、これらの風味が出てくれるので、飽きの来ないコーヒーに仕上がります。
今回の抽出方法(HARIO V60ドリッパー)
- 豆の分量:一杯当たり12g(一杯120mlで計算)
- 挽き具合:中挽き
- 抽出温度:83℃
ネルドリップ:オイリーな美味しさ
ナッツのオイリーな印象が非常に強いコーヒーに仕上がります。
ペーパードリップよりも穏やかで、またコーヒーオイルで円やかなテイストになるためでしょうか。強い甘みと穏やかさが相乗効果となって、刺激が弱いという意味において、個性に欠けるコーヒーに感じられるかもしれません。しかしそれは、甘みという個性があるからこそです。
ブラックで飲むには単調でベッタリした甘さのため、飽きてしまうかもしれません。しかしカフェオレに使うには、その甘さがむしろ、ミルクを引き立ててくれます。
今回の抽出方法
- 豆の分量:一杯当たり12g(一杯120mlで計算)
- 挽き具合:中挽き
- 抽出温度:83℃
フレンチプレス:上品な爽やかさ
ドリップコーヒーのバターらしさとは、やや異なる様相を呈しています。
甘く滑らかな風味と舌触りは、ドリップ同様に強く感じられます。しかしブラッドオレンジのような酸味が感じられ、落ち着きある上品さをもったテイストも持っています。ここがドリップコーヒーと異なるポイントでしょう。
また余韻にも特徴ある個性が感じられます。シトラス系の酸味は時間を経ると、ハーブのような爽やかさに変化していきます。やや爽やかさが目立っているコーヒーだなという印象を受けます。
そのため、軽く息抜きしたい時にお勧めのしたい飲み方です。
今回の抽出方法
- 豆の分量:18g(容量350mlのプレスを使用)
- 挽き具合:粗挽き
- 抽出時間:沸騰したお湯で4分00秒
水出しコーヒー:モカのような爽やかさ
滑らかな舌触りはそのままに、爽やかな風味に仕上がります。爽やかさはモカコーヒーのようで、酸味の類とは異なる爽快感があります。一方で、甘みやコクもやんわりと感じることができ、バランスに優れたコーヒーに仕上がります。
どこかイエメンのモカフレーバーに似た、カカオに似た印象を受け、バターのような感触とは一風異なるところが、また違う面白さです。
今回の飲み方
- 豆の分量:100m当たり10g
- 挽き具合:中細挽き
- 抽出方法:水に浸して6時間
ミルク・砂糖との相性
- ミルク:とても良い
- 砂糖 :良い
カフェオレ:濃厚ミルクが良い!
ワハナ・ロングベリーのバターらしい風味は、カフェオレに打ってつけです。特にジャージー牛のミルクなど濃厚なものは、コーヒーとミルクの濃厚さが交わって、豊かな風味に仕立ててくれます。
ただ、カフェオレにするとミルクとコーヒーの甘さの境界線が曖昧になります。そのため、コーヒーの味を保ちたいという方は、生クリームを少々加えるのも一つの手段としてお勧めです。
マンデリンと似て非なるワハナ・ロングベリー
スマトラ島と言うとマンデリンの印象が強いかもしれません。しかしワハナ・ベリーは「マンデリンであって、マンデリンでない」といったような豆です。それは見た目のみならず、風味もまた異なります。
新たなインドネシア産コーヒーを体験したいなという方は、一度飲んでみてはいかがでしょうか。「おぉ!」と唸ってしまう面白いコーヒーです。
コーヒー豆の情報
- 名称:ワハナ・ロングベリー
- 産地:インドネシア、北スマトラ州
- 精製:ウォッシュト(水洗式)
- 今回の焙煎:フルシティロースト
- Wahana農園HP:http://www.wahanaestate.com/