タイ王国というとトムヤムクンやパッタイなどの料理、またマンゴーやココナッツなどのフルーツを連想する方も多いでしょう。タイはこのように豊かで魅力あふれた食文化の国で、コーヒーにもまた魅力があります。
ここでは、そんなタイ王国のコーヒーの文化について見ていきましょう。
コーヒー豆への華麗なる転換
実はタイ王国では、北部地域を中心にコーヒー栽培が盛んです。なかなか想像しがたいかもしれませんが、じつは世界的に評価の高い良質なコーヒー豆を生産しているのです。
しかしそのコーヒー栽培の裏側には、様々な物語が秘められているのです。
黄金の三角地帯
コーヒー豆産地として著名なタイ北部チェンライ県は、以前はラオス北部・ミャンマー東部と一緒に「黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)」と呼ばれていました。何が黄金かというと「麻薬密造」の黄金地帯だったのです。
麻薬栽培が違法なのは確かです。しかし当時の人々にとっては僅かながらも貴重な収入源で、ただ栽培を禁止するだけでは彼らの収入が失われてしまいます。そこでこの問題の解決に乗り出したのが、何とタイ王室だったのです。
王室プロジェクト
ここで登場するのがコーヒー豆で、麻薬に代わる栽培作物としてコーヒーが選ばれたのです。この理由には二つあります。
一つは森林栽培できることです。タイ北部の人々にとって森林は切り離せないパートナーであり、環境保護としてもデメリットにはなりません。そこで森林と共生しながら栽培できるコーヒー豆が選ばれたのです。特に高い山々が連なるタイ北部は、コーヒーにとっても好都合な場所だったのです。
もう一つは商品価値です。麻薬は闇市場で買い叩かれますが、コーヒー豆は品質に応じた収入を得られます。特に森林栽培することで高品質なコーヒー豆が収穫できるために、収入の上昇が期待されたのです。
ドイトンとドイチャン
タイのコーヒー豆で有名なものが、ドイトンコーヒーとドイチャンコーヒーの二つです。実はこの二つは、王室のプロジェクトで麻薬栽培から転換したものなのです。特にドイトンに至っては、麻薬栽培を99.9%撲滅したほど成果を上げているのです。
タイのカフェ事情は?
ここからは、タイ王国のカフェやコーヒー飲料事情についてお話ししたいと思います。印象としては、ヨーロッパのようにカフェ文化が発達していないような思われがちですが、実はコーヒーの文化が発達しているのです。
一体どのような文化なのでしょうか?
タイはアイスコーヒーの国
タイは多くの方が予想される通り熱帯の国で、バンコクでは平均最低気温が最も低い時でも20℃前後です。タイ最北部の山岳地チェンライですら、10℃以上はあります。
そのためかホットコーヒーはあまり飲まれておらず、氷たっぷりのアイスコーヒーがスタンダードです。日本では、注文時に特に指定が無ければ、ホットコーヒーが出てきます。しかしタイでは反対で、指定が無ければアイスコーヒーが手渡されます。
オーリアンとは?
タイのコーヒー文化で欠かせないのが、タイ独自の飲み物「オーリアン」です。オーリアンはコーヒー豆に焙煎した穀類を混ぜてドリップしたコーヒーです。味はコーヒーよりスッキリしていて、アイスコーヒーにすると爽やかさが感じられます。
屋台コーヒーの文化
コーヒーの屋台は、都市部の広場や道路脇などで頻繁に見かけることが出来ます。そしてタイの人々は、日本人が自販機で飲み物を買うのと同じ感覚で、手軽な屋台でコーヒーを買って飲み歩いています。
屋台コーヒーの特徴は安価であることです。現地のスターバックス100バーツ前後に対して、屋台コーヒーは20~40バーツで買えてしまうのです。
屋台コーヒーは、深煎りで甘い
タイの屋台コーヒーは、深煎りでコクと苦みの強いコーヒーを、練乳やガムシロップで甘々にして飲まれます。しかしアイスで飲まれるためスッキリしたテイストで、甘々なのに飲みやすいコーヒーが多いです。
特に甘いコーヒー文化は根強く、無糖と注文しても微糖で出たり、甘い練乳の代わりにミルクを入れたりと、少しでも飲みやすくして出てきます。
見くびれない屋台コーヒー
屋台というとカフェより美味しくないんじゃないかと思いがちですが、見くびってはいけません。屋台によっては本格的な業務用エスプレッソマシーンを用いて、カフェモカやフラペチーノを提供しています。
また、小さな屋台なのに、コーヒーだけで10種類近くあるなんてこともよくあります。思った以上にタイの屋台コーヒーは充実しているのです。
タイの身近なコーヒー文化
国内でコーヒーを生産して、また自販機感覚で手軽に屋台のコーヒーが飲めるのが、タイ王国です。ヨーロッパのような寛ぐカフェ文化とは異なりますが、生活と切り離せないほど密着している点ではヨーロッパ並みです。
身近で手軽ならではのタイのコーヒー文化もまた、ヨーロッパとは異なり楽しいものです。