コーヒーの歴史を追っていく当コラム。今回は、ベトナムのコーヒー産業に注目していきたいと思います。“ベトナムコーヒー”という独特な飲み方が有名ですが、栽培や産業面に関してはどのような歴史を持っているのでしょうか。
フランスからの植民地支配
フランスからの植民地支配を受けていた影響から1887年にコーヒーが導入されたベトナム。栽培もフランス人主導のもと始まり、プランテーションが形成されていきました。
ベトナムで栽培されたコーヒーは、主に現地のフランス人によって消費されていたようです。苦味の強いコーヒーに、先住のベトナム人達はあまり興味を示しませんでした。
”ベトナムコーヒー”のルーツ
しかし、コーヒーの飲用はベトナムがフランスから独立した後も国民の生活に根付き、“ベトナムコーヒー”という独自の文化に発展させていったのです。「シントー」というフルーツと練乳を混ぜ合わせた飲み物が伝統的に飲まれていたベトナムにおいて、練乳入コーヒーである“ベトナムコーヒー”が開発されたのは、ある種、自然な流れだったのかもしれませんね。
ロブスタ種の一大生産地として
ベトナムで栽培されているコーヒーは、ロブスタ種という品種。アラビカ種がメインだった世界のコーヒーマーケットにおいて、ロブスタ種はアラビカ種より風味も劣り、あまり評価されていませんでした。
しかし、第一次世界大戦中にオランダ国内でロブスタ種の流行により、評価は一転しました。1990年代にはベトナムでのロブスタ種生産量は大幅に増加し、世界第二位のコーヒー生産大国にまで成長したのです。
民間企業のサポートで成長したコーヒー産業
ベトナムでのコーヒー産業をここまで成長させたのは、大手コーヒーメーカー「ネスレ」の協力があってこそだと言われています。栽培技術などの指導を現地の農家に指導するなど、強力なサポート体制でベトナムのコーヒー産業を世界レベルのものにしたのです。
ネスレがベトナムのコーヒー産業に目をつけた理由。それは、ロブスタ種の需要あってこそだと考えられています。高級銘柄のほとんどがアラビカ種のものでありながら、ネスレはあえてロブスタ種を栽培しているベトナムに目をつけたのです。
安価なロブスタ種は魅力的?
これは、価格の安さが関係しています。アメリカなどの国では薄いアメリカンを大量に飲む文化が未だに根づいており、安くて大量の豆に需要があるのです。また、現在では世界のスタンダードとなっているインスタントコーヒーを作るためにも、安いロブスタ種は非常に魅力的な商材なのです。
植民地支配から世界有数のコーヒー生産国にのし上がったベトナム
現在はスペシャルティコーヒーが流行となっていますが、手軽に手に入るコーヒー豆としてロブスタ種の需要はまだまだあります。インスタントコーヒーが生活に根付いた今となっては、安いロブスタ種の一大生産地であるベトナムのコーヒー産業が衰えていくことは考えられないでしょう。