エスプレッソを注文すると、普段ドリップコーヒーを飲んでいるカップより小さいカップで出てきます。この小さいカップを「デミタスカップ」と言う人もいれば、「エスプレッソカップ」と言う人もいます。この2つは同じものか、違いはあるのかを探ってみたいと思います。
デミタスカップとは
容量: 60~80ml
レギュラーカップの半分ほどの容量で、トルココーヒーやエスプレッソを飲むときによく使われます。その他にも、深煎りコーヒーやコース料理の最後のコーヒーを入れるカップとしても重宝されています。フランス語で「デミ(demi)」は「半分」、「タス(tasse)」は「カップ」という意味です。
デミタスカップ=エスプレッソ用ではない
デミタスカップは「エスプレッソを入れるカップ」と言われることもありますが、上でも述べたように、デミタスカップに入れられ提供されるコーヒー=エスプレッソではありません。デミタスは少量で濃い目のコーヒーを指し、その中にエスプレッソも含まれますし、濃い目に入れたドリップコーヒーも含まれます。
なぜ、デミタスカップのように小さいカップが生まれたのか。その起源は18世紀にまで遡るようです。
デミタスカップの起源
1806年、フランスのナポレオンはイギリスの製品をボイコットする目的で大陸封鎖令を発令しました。その影響で、フランス植民地からのコーヒー豆の輸出も規制され、欧州ではコーヒー豆が極端に不足する状態に陥りました。そのため、コーヒーではないコーヒー風飲料や代用品が市場に出回るように。
しかし、ローマにある「カフェ・グレコ」の3代目サルヴィオーニは代用品を認めず、厳しい状況の中コーヒー豆の消費を抑えるために、カップを小さめにしてコーヒーの量をいつもの2/3に減らし、価格も下げて提供しました。
“量を減らしても質は下げない”その思いは人々に受け入れられ、小さめのカップでコーヒーを飲むスタイルが確立していったのです。
エスプレッソカップとは
容量:20~30ml
エスプレッソをソロで飲むのに適した容量、形をしています。エスプレッソは深煎りにしたコーヒー豆を極細挽きにし、コーヒー豆を約7~9g使い、抽出温度は約90度、そこに約9気圧の圧力をかけて20~30秒で30mlほど抽出するコーヒーです。
高い圧力をかけて抽出するため、その量を多くすると出来上がるまでに時間がかかり、コーヒー豆の雑味やえぐ味なども強く出てしまいます。そのためエスプレッソの量は少なくなっているのです。
エスプレッソを美味しく飲むための構造
そして、エスプレッソカップは少ない量のエスプレッソをおいしく飲める構造をしています。量が少ないとすぐに冷めて本来のおいしさを失ってしまうので、それを防ぐため、エスプレッソカップには厚みがあります。
また、芳醇な香りを逃さないように飲み口の開きはあまり大きくなく、飲み口に丸みがあることで口当たりがやさしくなり、苦味を和らげてくれます。
さらに、カップの下に向かうほどすぼまり、底が丸く膨らんだ「エッグシェイプ」が良質なクレマを作り出します。エスプレッソをよりおいしく飲むために作り出されたカップと言えるでしょう。
エスプレッソの起源
エスプレッソカップに入れられるエスプレッソの起源は、デミタスカップが生まれた約100年後です。
1901年にルイジ・ベゼラがより早くより高圧力でコーヒーを抽出できる方法を開発しました。その特許を買い取ったデジデリオ・パボーニによって、1906年のミラノ万博に「ベゼラ」と言う名前でマシンが出品されたのが、エスプレッソの起源だそうです。
デミタスカップとエスプレッソカップの違いまとめ
デミタスカップもエスプレッソカップもエスプレッソを提供する際に使われるカップですが、起源や用途、容量などに違いがありました。
現在は、エスプレッソカップの名前で様々な容量のものが売られていますし、デミタスカップと混同され曖昧になっていますが、本来は違うもののようです。