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ゲイシャとは?【ゲイシャ種の特徴と歴史】

ゲイシャとは?【ゲイシャ種の特徴と歴史】

コーヒーに関心のある方であれば、一度は「ゲイシャ」という品種を耳にしたことがあるでしょう。数多くのコーヒー豆が出回る中でも、世界最高峰のコーヒー豆といえば、多くの方は「ゲイシャ」を挙げるかもしれません。

ゲイシャは栽培品種

みなさん、そもそも「ゲイシャ」が何かご存知でしょうか?地域名でも、農園名でも、ブランド名でもありません。ゲイシャは栽培品種であり、植物分類の一つです。

お米で例えると、「イネ」という種の下には「コシヒカリ」や「あきたこまち」といった品種がありますね。これと同じように、アラビカ種(コーヒーの種の一つ)の下にあるのが「ゲイシャ種」です。

ちなみに「ティピカ」や「ブルボン」といった名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。これらもゲイシャと同じく、栽培品種にあたります。

ゲイシャの歴史

原産地はどこ?

ゲシャ

ゲイシャ種はパナマで生まれた品種と思われがちですが、実はそうではありません。エチオピア南部にある「ゲシャ」という地域に生えていた品種です。このゲシャが訛って、ゲイシャ種と呼ばれるようになったそうです。

ゲイシャ種というとパナマのイメージが強いのは、原産地がエチオピアにもかかわらず、実際にゲイシャ種が有名になったのはパナマだったからです。となると、ゲイシャがパナマに行き着いた経緯が気になるところです。

パナマに届いたゲイシャ

パナマ

エチオピア原産のゲイシャ種がパナマに持ち込まれたのは、1963年と意外と近年だったのです。そのきっかけは、1950年代にIICA(米州農業協力機構)が中米のコーヒー産業振興のため、ゲイシャも含めて多種のコーヒー豆をコスタリカの研究所に持ち込んだためと言われています。

その後、パナマコーヒーの父親ともいわれる「ドンパチ農園」が、コスタリカからゲイシャ種を持ち込みました。これがパナマ初のゲイシャだとされています。その後、パナマ政府がゲイシャ種を農園に無料配布した結果、パナマ国内で広まっていったのです。

消え去ったゲイシャ

パナマ国内で広まったように思えたゲイシャ種ですが、当時は魅力のない品種として人気がありませんでした。その最たる理由が収穫量です。ゲイシャは収穫量が少なく、非効率的と見放されてしまったのです。

その結果、パナマではカトゥーラやカトゥアイといった高収穫量の品種によって、広まりつつあったゲイシャ種が埋もれてしまったのです。

また、パナマ以外のラテンアメリカ諸国では、1970~80年代にかけて「さび病」という植物病が大流行し、当然ながらコーヒーの生産にも支障が出てしまうことになります。そのため、収穫量も少なく病気に見舞われてしまったゲイシャは、壊滅的な状況に陥ったのです。

世界を驚かせた「ゲイシャショック」

エスメラルダ

“再発見”されたゲイシャ

ゲイシャの名は世界から一度忘れられた存在となりましたが、2004年“再発見”される機会がやってきました。それが、パナマのエスメラルダ農園が品評会に出したゲイシャ種です。

品評会で取り上げられるや否や、ゲイシャ種の持つジャスミンに例えられるユニークな個性は、一気に世界に名を轟かせたのです。

ゲイシャショックの背景

ゲイシャショックが起こった背景には2つの要因があります。

2つは2001年からパナマでコーヒーの品評会を開催し、一躍ゲイシャ種が認められ、高品質へと歩み始めたことにあります。これは、スペシャルティコーヒーの生産を後押しすることにもなっていきます。

そして、2つは当時のパナマコーヒーへの評価です。当時のパナマコーヒーは高品質であったものの、個性が弱く平凡だと評価されていたのです。そのため、ゲイシャの強烈な個性は、大きなギャップとなってショックをより強めたのです。

今日も続く、ゲイシャ伝説

その後の品評会(ベスト・オブ・パナマ)では、エスメラルダ・ゲイシャ一強の時代が続き、2007年には「1ポンド=$130(1kg≒3万円)」で、世界最高落札価格を更新しました。

その結果、2008年からはエスメラルダ・ゲイシャだけのオークションが開かれるという特別扱いにも至っています。今日でもエスメラルダ・ゲイシャのオークションロットとなると、他を引き離す高価格で販売されています。

このようにして、ゲイシャが神格化されたかのように、一気に高評価な品種として扱われるようになったのです。

ゲイシャもよりけり

豆

全てのゲイシャが美味しいのか?

今日では「ゲイシャ種=美味しい」という神話めいた存在のコーヒー豆ですが、「ゲイシャ種であれば全て美味しい」とは言い難い部分があります。

なぜならゲイシャにも適した気候があり、またどれほど丁寧に育てるかでも大きく変わってきます。エスメラルダ農園やドンパチ農園のゲイシャが美味しい理由は、気候と栽培技術が確かなものだからです。

そのため、ゲイシャという名前だけに飛びつくのは、少し安直かもしれません。いくらゲイシャとはいえ、購入する際はコーヒー豆の品質を見極める必要があります。

ゲイシャを飲んでみよう

ゲイシャが高価な要因は、風味だけではなく希少性もあります。コーヒー好きな人を相手にプレゼントや特別なひと時を考えたとき、ゲイシャというチョイスは見逃せません。

なかなか手を出しづらいゲイシャとはいえ、一度飲んでみる価値はあります。コーヒーとは到底思えない、その個性すぎる風味は、あなたのコーヒーの世界を変えてくれるでしょう。

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About the Author

汐井有

モットーは専門化したコーヒーについて、詳細を伝えつつ噛み砕いた説明で興味を持ってもらうこと。 専門的な記事と解りやすい記事の両方を書こうと思っています。