コーヒー器具の販売コーナーやドラマの画面片隅でも見かけることのある、直火式エスプレッソ。可愛いフォルム、そしてその使い勝手の良さから、コーヒーメーカーの代わりに検討している方も多いのではないでしょうか。そんな直火式エスプレッソについて、ここでは構造から選び方までご紹介していきます。
直火式エスプレッソとは?
この器具の特徴は、名前の「直火式」にあります。
一般的なエスプレッソマシーンは、ポンプ圧を使ってコーヒーを抽出します。一方の直火式エスプレッソは、火で水を熱することで発生する蒸気圧を使ってコーヒーを抽出するのです。そのため、ポンプ(機械)と対比させてコンロを使うことから「直火式」と名付けられているのです。
どのように抽出しているの?
ではその蒸気圧を使って抽出する仕組みを見ていきましょう。
この画像のように、一番下の火があたる部分(タンク)には水が入っています。これを熱することで、タンク内に蒸気が発生します。そしてその蒸気圧によって、水が上へと押し上げられていくのです。簡潔に言えばサイフォンの水を上げることと同じ論理です。
そして昇った水は、敷き詰められたコーヒー粉を一気に通過して、コーヒーが上部(サーバー)に抽出されるのです。
なぜクレマが出来ないの?
さてエスプレッソといえば、表面に浮いたクレマ(茶色く細かい泡)が特徴ですが、直火式エスプレッソはクレマが出来ません。
その理由は気圧の違いにあります。一般的なエスプレッソマシーンは、圧力ポンプを用いて9~10気圧の強さで一気に抽出します。この強い圧力によってクレマが発生するのです。
しかし直火式エスプレッソは、構造上から1気圧を超えた時点で、抽出が始まってしまいます。そのため圧力は到底マシーンに敵わず、クレマが出来ないのです。
直火式エスプレッソの選び方
どのような器具なのかお話しした次は、その器具の選び方についてお話ししましょう。直火式エスプレッソは、アルミ製・ステンレス製・多機能の3つに大別されますので、各々を見ていきましょう。
スタンダードな「アルミ製」
最も一般的な直火式エスプレッソが、アルミ製のものです。直火式エスプレッソ最大手ビアレッティ社の基本モデルということもあり、最も見かける機会の多いタイプです。
アルミ製の特徴として、安価で軽いことです。そのため使い勝手が良いのです。しかし気を付けなければいけない点が、アルミ製ゆえにIHクッキングヒーターでは使用不可ということです。
ではIHクッキングヒーターはどうすれば良いのか、それはこの次にお話しします。
丈夫でIH対応の「ステンレス製」
ステンレス製の直火式エスプレッソは、ここ数年で存在感を増しています。というのも、丈夫で長持ちするという長所があるからです。また「IH対応」というメリットでも販売されています。
しかし、IH対応という点については注意が必要です。日本では多くのIHクッキングヒーターが、安全上から底面の直径が12cm以上の物でなければ反応しません。しかし直火式エスプレッソはその多くが12cm未満なのです。そのため、専用のプレートや12cm未満対応のIHを用意する必要があります。
特殊なタイプ
近年の直火式エスプレッソは、様々な進化を遂げています。
その代表例がビアレッティ社から販売されているBrikka(ブリッカ)です。通常の直火式エスプレッソはクレマが出来ませんが、このBrikkaはなんとクレマが出来てしまうのです。
Brikkaについてはこちらの記事に詳しく書いてあるのでご覧ください。
この他にも、抽出する時に音で知らせてくれるもの、カップに直接注がれるもの……、様々なバリエーションが展開されています。普通の直火式エスプレッソでは物足りない方は、こういった特殊なものを選んでみるのも良いかもしれません。
直火式エスプレッソのメーカー
さて直火式エスプレッソと言えば、多くの方がビアレッティをイメージするのではないでしょうか。しかし実際は、他にも多くのメーカーが直火式エスプレッソを発売しています。ここからはそのメーカーについて見ていきましょう。
最大手「ビアレッティ(Bialetti)」
まずはやはり、最大手のビアレッティ社でしょう。
1919年創業で、1933年に“モカエキスプレス”を発売しました。直火式エスプレッソの別称「モカエキスプレス」は、実はビアレッティ社の商標なのです。商標が半ば一般名称と化しているくらい、世界的にも有名なメーカーなのです。
そしてビアレッティのシンボルと言えば、あの髭の付いた可愛いおじさんですが、これは創業者がモデルと言われています。
ビアレッティは先ほどお話ししたブリッカから、音の出るモカ・メロディ、その他多様なバリエーションの直火式エスプレッソを発売しています。迷った方はビアレッティのものを買えば間違いないでしょう。
- 輸入代理店サイト(日本語)
https://bialetti.jp/ - Bialetti公式サイト(英語・イタリア語)
https://bialetti.com/
ステンレス製で有名な「イルサ(ILSA)」
店頭でビアレッティと並んで目にする機会が多いのが、イルサの直火式エスプレッソでしょう。イルサは、イタリアにある日用品メーカーです。こちらの直火式エスプレッソはステンレス製のものが特に有名です。
ステンレス製の直火式エスプレッソを探している方は、注目しておくと良いメーカーの一つです。
- 輸入代理店サイト(日本語)
http://caffettiera-espresso.com/f_ilsa.htm - ILSA社公式サイト(英語・イタリア語)
http://www.ilsa-italy.it/
近年注目を浴びている「G.A.T」
知名度は先の二社に劣りますが、近年注目を集めている直火式エスプレッソがG.A.T社のMAGNIFICA(マグニフィカ)です。ウッド調のハンドルに柔らかなカーブを描いたフォルムは、イタリアらしい優れたデザイン性を持っています。
名前は知らないかもしれませんが、商品を見たら「あ!」と思う方もいるでしょう。マグニフィカは時々、コーヒー器具売り場でも目にすることができます。デザイン重視の方にお勧めのメーカーです。
- 輸入総代理店サイト(日本語)
http://www.metex.co.jp/shopbrand/ct76/ - 公式サイト(英語・イタリア語)
http://gatspa.it/
ワンランク上の「アレッシィ(ALESSI)」
イタリアのホームウェアメーカーの「アレッシィ」、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。優れた機能美があり、高級なホームウェアでも知られているこのメーカー、直火式エスプレッソも販売しています。
しかし、安いものでも6,000円、通常は1万円を超える高価な直火式エスプレッソです。ものによってはエスプレッソマシーンより高いです。しかし、そこには機能美と設計の良さが凝縮されています。
ワンランク上の直火式エスプレッソを探している方は、一度見てみる価値があるでしょう。
- ALESSI 日本正規総代理店
http://www.alessi.jp/ - ALESSI公式サイト(伊・英・仏・独・西、他)
https://www.alessi.com/it_it/
直火式エスプレッソを知ったなら、次は淹れてみよう
さて、構造からメーカーまで直火式エスプレッソを知ったなら、次は実際に淹れ方を見てみましょう。直火式エスプレッソの淹れ方・使い方については、こちらの記事に詳しく書いてあるので、続いてご覧ください。