“スプレードライ製法”、コーヒー通の方は耳にしたことがあるのではないでしょうか。手軽に淹れて飲むことのできる「インスタントコーヒー」、ぱっと見“凝縮されたコーヒー液の粒”というイメージがありますよね。コーヒーに限らず、お茶、小麦粉、お米などの食品だけでなく、医薬品などでも目にするスプレードライ製品について今回はお話します。
インスタントコーヒーとスプレードライ製法
スプレードライ製法は、液体または液体・固体の混合物を気体中に噴霧して、高温で急速に乾燥させ“乾燥粉体”を製造する手法のことです。かみ砕いて言うと「高温で瞬間的に乾燥させた結晶」です。
インスタントコーヒーが生まれた背景
インスタントコーヒーが開発された背景には、実はコーヒー大国ブラジルで起きた1920年代後半のコーヒー豆の大暴落が関係しています。この頃、ブラジルではコーヒーを栽培しすぎてしまったことで、多くのコーヒー豆が余ってしまったのです。コーヒー豆の流通がうまく流れなくなってしまったため、ブラジル政府はこの“余ってしまったコーヒー豆”をどうにかしたいと考えたのです。
スプレードライ製品とフリーズドライ製法
当時、画期的とも呼べるインスタントコーヒーの作り方は、実は2つの製法から精製されています。それが、フリーズドライ製法と、今回ご紹介する“スプレードライ製法”です。熱を使わず風味を凝縮させるフリーズドライ製法に対し、スプレードライ製品は「ひとつひとつの粒子が細かく水に溶けやすい」のが特徴です。また、軽くて長期保存にも向いていると言われています。
スプレードライ製法とは
スプレードライ製法は先ほど述べたように「高温で瞬間的に乾燥させた結晶」です。
乾燥するための塔施設を建て、およそ40mほどの高さから霧状のコーヒー液を落下させていきます。そして、コーヒー霧が落下するまでの間に200℃近くもある熱風を吹きかけ、コーヒー霧の水分を飛ばし、結晶化させるのです。
スプレードライ製法のメリット・デメリット
大掛かりかつコストのかかりそうな製法のように思えますが、塔施設の構造は非常にシンプルで大量生産に向いています。そのため、スプレードライ製法は製品のロスが少なく、コストを安価に抑えられる点が最大のメリットと言えます。また、粉末そのものが極小であるため、水や牛乳に溶けやすいというのも嬉しい利点です。
スプレードライ製法のデメリットとしては、材料を高温で噴射するため、風味の損失が多いという点。とはいえ、技術の向上により、熱による品質の変化は少なくなってきているという話も最近では耳にするようになりました。
インスタントコーヒーをより美味しく!
インスタントコーヒーを、ホットコーヒーとして楽しみたい場合は、湯に溶けやすく風味を崩さない「フリーズドライ製法」。アイスコーヒーとして楽しみたい場合は、水に溶けやすい「スプレードライ製法」がおすすめと言われています。
2つの工夫を日常化してみよう
また、インスタントコーヒーを美味しく楽しむには、2つの工夫を取り入れるとベストです。ひとつは「湯温を80℃で淹れること(沸かした湯をポットのまま濡れた布巾の上で10秒置く)」、そしてもうひとつが「フライパンで炒ってから淹れること」です。軽く香りがする程度にさっと炒るだけでいいので、ぜひ試してみてください。
スプレードライ製法とは まとめ
スプレードライ製法とは、コーヒー液を気体中に噴霧し熱風で乾燥させ、粉末を製造する製法のことです。スプレードライ製法のコーヒーは水に溶けやすいため、アイスコーヒーに向いています。フリーズドライ製法に比べ、熱を使用することから風味が落ちると懸念されてきましたが、技術の向上により品質の変化は少なくなっているようです。