イスラム世界最高の知識人と評価され、世界的な大学者としてもヨーロッパ医学や哲学に多大な影響を与えたアヴィセンナ。今回は、コーヒーについての記述をした人物としても知られているアヴィセンナ医師について見ていきましょう。
歴史に残るコーヒーの記録
コーヒーの記録は、900年頃アラビア人医師ラーゼスによってはじめて行われたといわれています。そこには、詳細な臨床結果とともにコーヒーの消化促進作用・強心作用・利尿作用などの薬理効果について記されていたそうですが、その文献は散逸し内容を確認するのが不可能になっているそうです。
コーヒーに関する最も古い文献
アヴィセンナ医師はラーゼスの知識を受け継ぎ、コーヒーについて医学典範に記したといわれています。この医学典範はコーヒーに関する記録としては現存する最も古いもので、大変貴重な記述です。
アヴィセンナについて
アヴィセンナは980〜1037年頃ペルシアに生まれ、幼いころからコーランを学び、10歳で文学作品とコーランを暗誦することができるほど優秀な子どもでした。
商人の下で算術を学び、哲学者のもとで哲学、天文学、論理学などを学んだ後、医学者に師事し、自然学、形而上学、医学を学び16歳の時にはすでに患者を診療していたといわれています。
医学典範とコーヒーの薬理効果
また、無料診療を行い経験を積むことで、医師としての名声を高めていきました。10世紀の終わり頃、アヴィンセンナは医学者として理論的な医学の体系化を目指し「医学典範」を執筆しました。その中にコーヒーの薬理効果についての記述をしたといわれています。
医学典範について
アヴィセンナの医学典範は、ヒポクラテスの唱えた四体液医学「人間は血液・粘液(痰)・黄色胆汁・黒色胆汁の4つの体液のバランスが良い時は健康で、バランスが悪い時は病気になる」説と、ガレノスの「熱・冷・湿・乾という人間の四つの基本的性質」説を継承し、さらに発展させたものだといわれています。多くの医師がコーヒーの健康保持効果について認めていたといわれています。
アヴィセンナが書き記したこと
アヴィセンナは、「(コーヒーは)温にして乾、別説によれば冷。身体の諸器官を強化し、肌をきれいにする。皮膚の下の湿性を乾かす。体に素晴らしい香を与える。」と記しています。これは、コーヒーには温性の働きがあり、利尿作用により水分が排出され冷をもたらすと読み取れます。
そして、身体の諸器官を強化というのは興奮作用や覚醒作用を表し、肌をきれいにするとは、コーヒーの持つ美肌効果について記されたものではないでしょうか。また、アヴィセンナは、香りによる治療も行っていたという記述もあり、コーヒーのアロマ効果についても書き残したのも納得できますね。
ペルシアの知識人アヴィセンナ医師まとめ
アヴィセンナは、アラビア人医師ラーゼスの知識を受け継ぎ、コーヒーの薬理効果についての記録を残したペルシア人医師。イスラム世界が生み出した最高の知識人として評価されています。
コーヒーの薬理効果は医学典範に記録されていて、コーヒー持つ消化促進作用・強心作用・利尿作用などの、コーヒーの健康保持効果について詳細に記されています。ラーゼスの文献は、散逸して確認することはできませんが、アヴィセンナの医学典範は現在も手にすることができる貴重な文献のひとつです。