まるで実験室にあるような風貌の器具で、コーヒーを抽出するサイフォンコーヒー。アルコールランプの炎、水が沸き上がり移動する様子、漂うコーヒーの香りが相まって、時間を忘れ見とれてしまうような演出効果の高さが魅力の淹れ方です。
水が移動してコーヒーが出来上がる、サイフォンコーヒーの原理についてご存知でしょうか。
サイフォンコーヒーとは
真空ろ過式と呼ばれる抽出法で、19世紀の初め頃にヨーロッパで開発され広まったと言われています。フラスコの水(湯)をアルコールランプで熱して発生した蒸気の圧力を利用し、水(湯)を上部のコーヒー粉を入れてあるロートへと移動させ、コーヒーを抽出します。
コーヒー粉は湯に浸された状態で成分の抽出が進むため、その味わいは濃厚です。さらに、サイフォンコーヒーのフィルターは布であるため、ネルドリップと同じように粉っぽさのない澄んだ味わいも楽しむことができます。
サイフォンコーヒーの原理
サイフォンコーヒーは、水の気化と凝結を原理とした抽出法です。
1mlの水が気化して水蒸気になると、その体積は1000ml以上に膨れ上がります。この大きな水蒸気の力が水を押し上げる力となり、フラスコ内の水が上部に設置されたロートへと押し上げられるのです。
このときに、フラスコ内にある空気も出ていくため、フラスコ内は残る水を除けば、ほぼ水蒸気で満たされた状態となります。そこで、火を外しフラスコ内の温度を下げると、フラスコ内を満たしていた水蒸気はすぐに水に戻り、その体積が1/1000以上小さくなるため真空状態に近くなります。
フラスコ内が真空状態に近くなるということは、その内部圧力は大気圧より低くなり、上部のロート内で抽出されたコーヒー液が大気圧に押され、フラスコ内に下がっていく「吸引」という作用が起こるのです。
サイフォンの原理
サイフォンコーヒーの原理と混同されやすいのが「サイフォンの原理」です。
「サイフォンの原理」とは、水時計の開発者であるクテシビオス(紀元前3世紀半ばのアレクサンドリアの技術者)によって発明されたのではと言われている「サイフォン」のメカニズムのことを指します。「サイフォン」とは、隙間のない管を利用し、途中出発点より高い位置を通しながら、液体をある地点から目的とする地点まで導いていく装置です。
サイフォンコーヒーの原理はこの「サイフォンの原理」を利用していると言われることもあるようですが、正確には別物になります。
コーヒーの淹れ方サイフォンコーヒーの原理まとめ
サイフォンコーヒーの原理には、水蒸気の特徴とその力が大きく関わっていました。この力を発揮させるには下部のフラスコと上部のロートをしっかりと密着させなければなりません。
多くの人がサイフォンの淹れ方の注意点として「ロートをまっすぐ、そしてしっかりと差し込む」ことを挙げているのはそのためです。原理を知ると、試したくなる。原理を知るために、試したくなる。サイフォンコーヒーはまさに“実験”のようなコーヒーの淹れ方と言えるのではないでしょうか。