コーヒーの歴史を追っていく当コラム。今回は、コーヒーの淹れ方が進化していった当時のエピソードを紹介します。コーヒー器具の発達は、コーヒーの楽しみ方に多様性をもたらしました。どれくらいの時期に、どの国で器具が発明されたのか見ていきましょう。
ヨーロッパでのコーヒー普及と布ドリップ
ヨーロッパに広まったコーヒーは、多くの人に飲まれるようになるにつれ、イブリックと呼ばれるポットのような容器で煮るトルコ風の楽しみ方から、水差し型の容器に豆を入れて煮出す抽出方法に切り替わっていきました。
トルコ式抽出方法から布ドリップへ
しかし、この飲み方では煮出したコーヒーに豆の粉が混ざってしまいます。沈殿するまでに長い時間を要する“トルコ風コーヒー”は、コーヒー好きの人々にとっては悩みのタネでもあったのでしょう。
後に、粉を取り除くため、粉末にした豆を麻の袋に入れて煮出す方法が考案されました。この方法は、袋が次第に短くされてるかたちで発達し“布ドリップ”が生まれたのです。
ドリップポットの発達とペーパードリップ
フランスでは、1763年に「ドン・マルティン」によって“ネル付きドリップ・ポット”が発明されました。ドン・マルティンが考案したこのポットは、1800年前後にドゥ・ベロワによって改良され、現在私達が使っている「ドリップポット」の原型にまで進化をとげたのです。
ペーパードリップの発明
ドイツでは1908年にメリタ・ベンツの手によって使い捨てができる“ペーパードリップ”が発明されました。手軽に楽しめるペーパードリップは、ドイツ国内のみならずヨーロッパ中で好評を得るとともに大成功を収めたのです。
19世紀の頭には、トルコ式コーヒーのポットを原型とした“浸潰法”の器具が発明されました。
サイフォン式の発達
ドリップ式のコーヒー器具発達とは別のルートで、サイフォン式の器具も独自の進化を遂げていきました。サイフォン式の道具は正確な発祥がわかっていないものの、1830年代にはドイツで既に使われていたといいます。フランスやイギリスでは、独自の改良が行われたサイフォンの特許が取得されていました。
そんな中でも、1841年にフランスのヴァシュー夫人が特許を取得したガラス風船型のサイフォンは、現在使われているものとほぼ同じ形にまで発展を遂げたとのことです。
イタリアでのエスプレッソ
イタリアでは、水蒸気を応用した「エスプレッソ方式」が徐々に改良されドイツやフランスなどヨーロッパ各地に伝わっていきました。エスプレッソコーヒーは、それぞれの土地で独特の淹れ方が根付き人々に楽しまれていきました。
トルコ式コーヒーから多様な抽出方法へ発展していった
もともとはヨーロッパ全体でトルコ風コーヒーが楽しまれていましたが、徐々に現在のようなドリップ式、サイフォン式、エスプレッソ式といった淹れ方が開発され、“コーヒーの多様化”が実現されていったのです。
1800年代に使われていた器具が、現在のものとほとんど変わりないというのは驚きですよね。