日本で最も普及しているドリッパーは、おそらくカリタのドリッパーではないでしょうか。普段何気なく使っている方も多いと思いますが、使い方を少し気にするだけで、格段に美味しいコーヒーに仕上げることができます。
準備するもの
まずはドリップに必要なものが揃っているのか確認していきましょう。
最低限必要なもの
- ドリップケトル
- コーヒー粉
- Kalitaドリッパー
- ペーパーフィルター(台形)
- 耐熱容器×2(サーバー・マグカップなど)
あると便利なもの
- キッチンスケール
- 温度計
淹れ方:入れる前の準備
ドリッパーの水気を拭き取る
まずは、ドリッパーの水気を拭き取りましょう。
もしドリッパーが濡れていると、リブと呼ばれる空気を抜くための溝に紙が張り付いてしまい、空気が抜けなくなってしまいます。淹れ方によっては敢えて濡らす場合もありますが、基本は濡らさないようにしておくと無難です。
フィルターを折ってセットする
次にフィルターを折ります。フィルターの底と側面にある縫い目を、互い違いに折ります(片方が山折りならもう一方は谷折り)。
これは縫い目がコーヒー粉や水の重みで破れないようにするためです。そもそもドリッパーは折った状態でピッタリ合うように設計されているので、必ず折るようにしましょう。
そしてフィルターを折ったらドリッパーにセットし、その後にコーヒー粉をセットしましょう。
コーヒー粉を計量する
フィルターの後はコーヒー粉の準備です。まずは使用するコーヒー粉の計量から始めましょう。そこで気になるのが「一杯当たりどれくらい使うの?」という疑問ですが、答えは「人それぞれ」です。
どういうことかと言うと、考え方や味の好みによってコーヒー粉の量は変化するからです。例えば、一杯当たり何gと計る方がある一方で、杯数が増えるごとに一杯当たりの量を減らしていく方もいます。また一杯当たり10g使う人から15g使う人まで、様々です。
ただ迷ったときは便宜的に「一杯当たり10g(≒ドリッパー付属スプーン一杯)」で計量すると無難です。そこから好みに合わせて調整していくと良いでしょう。
〘ポイント!〙コーヒー粉は多いほうが淹れやすい
コーヒー粉の量ですが、量が多いほうが抽出は安定するので、淹れやすくなります。料理と似ていて、コーヒー粉の量は多いほうが味がブレづらく、比較的安定したコーヒーを淹れやすくなるのです。
逆に、量が少ないと繊細な操作を必要とするので、自身の技術を推し量りたいときにはオススメです。
コーヒー粉を均そう。
計量したコーヒー粉をセットするのですが、この時にひとつポイントがあります。それは「コーヒー粉を均すこと」です。
コーヒー粉の表面が凸凹だと、抽出するときに偏りが生じたりお湯が端に流れたりと、不都合が生じて失敗の一因になりかねません。また、空気抜きが同時に行われ、抽出も安定するようになります。
〘ポイント!〙お湯の温度を調整しよう
そして準備の最後に、お湯の温度を調整しましょう。ドリップするときは沸騰したお湯は使いません。なぜなら沸騰直後の湯は高温すぎるため、不要な雑味さえも抽出されてしまうからです。
コーヒーを淹れる上で標準的といわれる温度は、80~85℃。好みに応じて70~95℃の間で調整してみると良いでしょう。高温だとストロングに、低温ではウィークに仕上がります。
淹れ方②:蒸らし
まずは「蒸らし」を行います。
この蒸らしはコーヒーの準備運動で、これが上手く出来なければ抽出も上手くできません。そして何といっても、蒸らしは湯量の調節が難しく、ドリップで最も技術が必要と言っても過言ではありません。逆を言えば、蒸らしが上手くいけば、美味しいコーヒーに大きく近づくことができます。
まずはドリッパーの中心に位置を合わせて、お湯を注ぎます。
そこから手早く全体へと広げていきます。
そして全体が濡れる程度でお湯を止めます。
この状態でしばらく待ってコーヒー粉を蒸らします。待ち時間は人それぞれですが、一般的には30秒~1分程度の方が多く見られます。
〘ポイント!〙お湯の量に気を付けよう
蒸らしは抽出ではありません。つまり、お湯を注ぎすぎてドリッパーからコーヒーが落ちてしまうと、これは蒸らしではなく抽出になってしまいます。そのため、蒸らし目的で注ぐお湯の量には、気を付けなければなりません。
一般的に蒸らしのお湯の量は…
- コーヒー粉全体がムラなく濡れる程度
- ドリッパーから数滴落ちる程度
と言われています。つまり、コーヒー粉を完全に濡らさなくてはいけませんが、サーバーにボトボトお湯が落ちてしまうほど注いでしまうのも適切とは言えません。そこが蒸らしの難しい所なのです。
淹れ方③:コーヒーの抽出
まず、蒸らし同様に中心からお湯を注ぎます。
すると注いだ跡にクリーム色の泡が出てきます。
そして、泡を広げていく要領で、周囲へと広げながら注いでいきます。この時できるだけ水位を下げないように気を付けて、お湯を注ぎ続けると雑味が入りづらくなります。
〘ポイント〙縁には注がないようにしよう
お湯を注ぐときに気を付けて頂きたいことが、縁(コーヒー粉とフィルターの境界付近)に注がないことです。
なぜダメなのか?それは縁に注いだお湯では抽出されないから、です。この縁の部分はコーヒー粉の層が薄い(あるいは無い)ので、お湯を注いでも十分にコーヒーの味が出ません。極端に言うと、薄めた不味いコーヒーしか抽出されない…ということになります。
そのため、縁には注がないようにしましょう。
杯数分に達したら、ドリッパーを外そう
そしてコーヒーが杯数分の量に達したら、ドリッパーにお湯を残したまま用意したもう一つの容器に移します。これで抽出は完了です。この残ったお湯までサーバーに落としてしまうと、雑味が混ざる原因になります。勿体ないかもしれませんが、別の容器に移しましょう。
淹れた後も気を付けよう
先程の手順でコーヒーの抽出そのものは終わりましたが、抽出後のことも少し見ておきましょう。気を付けると、より良くなることが幾つかあるのです。
出涸らしの状態は?
残り湯が落ちきった出涸らしを見てみてください。この時にチェックしたいポイントは“出涸らしの形状”です。コーヒー粉の層の厚みが均等であれば、バランスよくお湯が注げている証拠です。一方で、偏りがあった場合(粉の厚い箇所と薄い箇所がるなど)は、注ぎ方に偏りがあるということです。
また上手く注げた場合、コーヒー粉の上に泡(アク)が乗ります。これが混ざると雑味の原因になるのですが、これが出涸らしに残っているとコーヒーにアクを落とさずに淹れられたということです.
出涸らしの捨て方
抽出した後の出涸らしの捨て方ですが、紙のみ持ち上げて捨てていませんか?他のドリッパーの記事でも散々お話していますが、これは紙が破れて熱いコーヒー粉が散乱する恐れがあるので危険です。
そこで画像のようにドリッパーごと持ち上げて、ごみ箱の上でひっくり返してドリッパーを軽く叩いてください。すると、いとも簡単に出涸らしが落ちてくれます。
Kalitaドリッパー:平凡は汎用性の裏返し
Kalitaのドリッパーはあまりにも普及率が高いため、平凡なドリッパーと見られることがあります。しかしその平凡と言われるまでの扱いやすさと汎用性の高さは、カリタが高性能たる所以でもあります。
様々なドリッパーが各社から発売されるなか、ずっと使われ続けているカリタのドリッパー。使い方次第では他のドリッパーにも負けない味を引き出すことも可能です。